建築現場で活躍する足場は、高所作業のエキスパートたちの仕事を支える重要な存在です。
足場は危険な作業であるためいろいろなルールが用意されています。
では、足場を作るにあたって「高さ」にはルールはあるのでしょうか。
この記事では足場の定義や注意点を解説します。
足場における定義とはだれが決めているの?
足場は建物の工事に無くてはならない存在です。
例えば、ご自宅の外壁塗装が剥がれてきてしまったり、屋根の修繕が必要となったりする場合には足場を設置したうえで作業者が修理工事を実施することになります。
高所作業を不安定な場所で実施すると、作業者はバランスを崩して倒れてしまう可能性がありますし、仕上がりにムラができてしまう可能性があります。
安全に、そして丁寧な作業を遂行するためには脚立ではなく足場の存在がベストなのです。
しかし、高所作業であることには変わりはありません。
そこで、足場には細かいルールが設けられています。
では、このルールはどのように定義づけられているのでしょうか。
足場の危険性は国も問題視してきた背景があり、「労働安全衛生規則」という国が作る規則によって細かく定義が設けられています。
また、国が主導の「資格制度」も導入されています。
資格取得という機会を通して足場の知識をきちんと身に付けることで、安全意識を高めた作業が実現できるしくみです。
足場における「労働安全衛生規則」とはどのようなもの?
足場の細やかな定義は「労働安全衛生規則」によって定義づけられています。
この規則は厚生労働省が管轄するもので、労働安全衛生法を土台として作られているものです。
労働者の安全を保護する目的で作られています。
この規則は4つに分けられており、足場に関すること以外にも、安全の管理体制や就業規則に関することなども細かく定義されています。
そのため、足場に従事していない労働者の方も、ぜひ関心を持っていただきたい規則と言えるでしょう。
では、労働安全衛生規則の中で、足場についてはどのように語られているのでしょうか。
高所作業に関する項目は、第二編の中で細かく定義が語られています。
墜落や飛来による崩壊を防止する内容が書かれており、作業床の設置基準や飛来物への危険防止策などが触れられています。
では、今回テーマとしている「高さ」についてはどうでしょうか。
労働安全衛生規則では、「2m」というキーワードが頻出します。
ではこの2mとは一体どのような高さを意味するのでしょうか。
労働安全衛生規則における高さ制限とは
労働安全衛生規則では、高さ2メートル以上の箇所で作業が必要となる場合には、囲いなどを付けて安全対策を実施するようにと明示しています。
安全措置が無ければ作業者が落下する、あるいは資材を落下させるリスクがあるからです。
効率よく作業するためにも作業床を設置したり、安全帯などの装備を身に付けたりと、細やかな安全対策を行うことが求められています。
この基準の高さが2mであり、足場の高さを指定する用語ではありません。
あくまでも1つの目安、としての高さです。
作業床の設置も厳しく求められていますが、単管足場のように床板がないものは危険性が高く、安全基準を満たせません。
1980年代以降に単管足場を差し替えるような形で生まれた「くさび緊結式足場」なら、作業床が設計されているため、現在建築現場の多くに活用されています。
足場に関してはいろいろな情報がネット上にも存在していますが、基本的に正しい情報にあたりたい場合には、労働安全衛生規則に沿った内容のものをマスターすることがおすすめです。
高さが低い、低層の作業には単管足場も活躍している
単管足場はその危険性が指摘されていることから、現場で見かける機会が減少していますが、では需要が消えてなくなったのかと言われたら決してそうではありません。
高さがなく、低層階の作業では今も単管足場が大いに活躍しています。
では高さが低い箇所で単管足場を使うメリットとは一体どのような点でしょうか。
結論からいうと、単管足場は組立作業がしやすく、変幻自在に設計できる点が挙げられます。
単管足場は基本構造に「パイプ」を使っており、パイプ同士を組み合わせることで縦横無尽に大きさを設計することができるのです。
滑りやすい、危険性があるというデメリットはもちろん知っておくべきなのですが、単管足場は隣家との間が非常に狭い場所にも組み立てることが可能です。
特に都市部は隣家との間の敷地が狭く、外壁塗装や屋根工事の際の足場に苦戦します。
そのようなときに柔軟に組み立てることができる足場はとっても便利なのです。
足場に関する規則は変化し続けている
足場に関して定義を行っている労働安全衛生規則は、実は定期的に見直しが行われています。
厚生労働省が主体となって足場の安全性を高めていますが、それでもなお労災事故につながってしまう足場事故は多発しています。
残念なことに墜落事故は定期的に起きてしまっているのです。
足場に関する規則の大きな変化で記憶に新しいものは、平成21年6月の改正でした。
墜落防止策の追加やメッシュシートの設置などが義務付けられた事案です。
このほかに、直近では足場の高さの問題とは少し逸れるのですが、2019年には労働安全衛生法自体に変更点がありました。
その内容は労働時間の適正な把握や、長時間労働者への指導の強化などです。
日本は全国的に労働時間が長い傾向があり、過労死などの問題も多くなっています。
足場の設置が必要な建設業界では基本的に日中帯の作業が多いですが、それでもなお過酷な作業を強いられている現場はゼロとは言えないでしょう。
足場の管理者側が今後、足場の高さなどの安全管理だけではなく、労働時間や労働衛生環境についてもこれまで以上に力を入れて、改善を目指す必要があるのです。
そして、長時間労働を強いないことは7足場管理者側にとっても大きなメリットがあります。
無理のない範囲で働くことは作業効率をアップさせる効果があるからです。
疲れが溜まってしまっていたら、設置した手すりからも落下してしまう可能性もありますよね。
労働者を守ることは、現場の士気を挙げることにもつながるのです。
まとめ
今回の記事は足場の「高さ」を中心に、労働安全衛生規則についても触れながら詳しく解説を行いました。
足場は手すりの設置や高さによって作業床の設置などが求められるなど、労総者保護の観点からさまざまな規則が導入されています。
この機会に今一度、管理者・労働者の双方が足場に関する危機管理意識を見直してみてはいかがでしょうか。